
2.本事業の成果
(1)12億の民と多くの問題を抱えつつめざましく発展する隣国との医療分野における学術交流、日中共同で実施する調査研究、またそれを補完する人の交流、在留中国人研究者に対する援助等は、日中両国の医学交流・医療協力の発展に最早欠かすことのできない事業となっている。日中医学協会は創立以来、中国の将来を担う医療分野における人材の養成と、日中両国の医学学術交流の発展のために協力することを事業の核とし、過去、次の4つの項目について助成事業を行ってきた。
?調査並びに研究に対する助成
?学術交流に対する助成
?中国人研究者・医療技術者招聘助成
?在留中国人研究者研究助成
当初設置した?日本人研究者派遣助成については昨今の財政事情から割愛せざるを得ず今日に至った。本事業を安定的に維持・継続することは、日中両国はもとよりアジアと世界の人類の健康と福祉の向上に大きく貢献すると信じる。この度日本財団の補助事業の指定を受け、多額のご援助を頂いたことにより、従来の助成事業を発展的に継続することが可能となった。日中医学協会関係者は勿論の事、日本と中国の医学協力のため日夜努力している医学者にとってこのうえない僥倖である。ご高配に心から感謝申し上げる。
(2)さて、平成8年度の貴財団の補助事業は、当協会助成事業として採択した中から、別記「実施内容」のとおり行われた。
?調査並びに研究に対する助成は、基礎的な研究、先端的研究に関するものと共に日中両国の歴史的民族的な特徴を生かした研究の継続が見られる。笹川医学奨学金制度のかつての師弟関係による共同研究の発表もよろこばしい事である。今年度は全体に歯科に対する助成が多かったが、歯科の領域に限定せず医学全体に関わる研究が進められている。薬学分野は一件であるが、生薬関係の園発に関する研究は時宜にかなったものと思われる。
?学術交流助成については、日中医学交流のさきがけとなった日中寄生虫病学セミナーをはじめ、日中糖尿病シンポジウム。日中ウイルス学会、日中組織細胞学セミナーとも過去10年以上にわたって両国の専門家の地道な努力に支えられて発展してきたものである。これらの学会に集う若き研究者の間に相互交流、共同研究が数多く芽生えていることを大きな成果としたい。当協会としてはせめて代表者の派遣にたいする支援を継続したいと考えている。
?中国人研究者・医療技術者招聘助成は、当初8名を決定したが、中国所属機関の人事の都合により2名の来日が実現しなかった。今後の実施上注意すべき課題として受けとめたい。6人の中国人研究者については、30代の研究者が多いことに注目したい。何れも立派な研究者として迎えられ、将来を嘱望されている。
?在留中国人研究者に対する研究助成は、当協会の日本財団補助事業の中で最も競争率の高いものである。この審査に当たって私共は、日本の留学生受け入れ制度の貧弱さを痛感させられている。皆わずかの生活費の中で日夜身を削るように学問に励む姿勢に感動させられる。月額5万円の研究費がどれほど彼らを勇気づけているか計り知れない。
前ページ 目次へ 次ページ
|

|